作り手と使い手
もうかれこれ20年以上歯科医院のお掃除をしてきていますが、いろんな内装デザインがあり、床材も多種多様····
デザイナーさんの考えや院長先生の想いが詰まったクリニックは愛着があると思うし、自分の城を持ったような気分になったことだと思います
でも、ほぼ100%の院長が
ああしとけば良かった
こうしとけば良かった
うわっ、あれ失敗やん
みたいな反省点があるみたいです
それは小さいものから大きいものまであるし、中には開業後にデザイナーさんと大モメして絶縁····なんてケースも聞いた事があります
医院が完成し、先生の物となってからウチの出番がやってきますが、
あちゃー
って思うクリニックも結構多くあります
デザイナーさんや工務店さんは
『作り手』
で引き渡しが終われば基本的にはお役御免····
それから
『使い手』
である院長先生に起きる問題にはほぼノータッチになりますが、数年後には結構大変な事になるケースも多くあります
僕らの仕事で言えば床材····
塩ビタイル
塩ビシート
フローリング
石
セラミックタイル
カーペット····
床材にも色々あるし、それぞれに長所・短所があり定期的なメンテナンスの方法も変わります
今回はその中でも『塩ビタイル』について
僕の経験的に言えば歯科医院の9割以上が床材に塩化ビニール素材を使ってると思うし、その内7割くらいは
『塩ビタイル』
と言われる30~50cm角の床材を貼ってます
資材費も高くはないし、施工もしやすく、部分的に張り替えもできるしデザインも豊富····と言うことないくらい良い資材だと思いますが、その
『塩ビタイル』
の中にも種類があるのはあまり知られてない
それはエンボス加工してあるとか、最初から光沢があるとかではなく、塩化ビニールの質自体が違うんです
歯科医院で使われる塩ビタイルのほとんどは
『ホモジニアスタイル』
と言われる床材で複層構造でプリント層があるのでデザインも豊富、バインダーと言われる可塑剤や安定剤の含有率が高いので柔らかく割れたり欠けたりしない特性があります。
一番表層のクリア層が削れるとプリント層にもダメージが及び柄が切れてしまうことも歯医者さんではありますが····
もう1つは
『コンポジションタイル』
と言われる床材で単層構造で削れても同じ柄が出てくるのはメリットですが、逆に言うと削れたり割れたり欠けたりしやすく、デザインの数も少ない安価なタイルです
施工単価を押さえるために
『コンポジションタイル』
を勧める工務店さんも結構ありますが、歯科医院には向いてません
歯科医院はユニットの後部でスツールに座ったまま少しの移動をしながら治療するのが一般的ですが、そのスツールで動く度に床に与えるダメージは相当強く、経年とともに床材を磨耗させます····
金属より硬いと言われるセラミックタイルですら数年で表面が磨耗してしまうほど床のダメージが激しいのが歯医者さんのユニット周りなんです。
表層が弱い
『コンポジションタイル』
だと粉状に削れる《パウダリング》やヒビ割れなどが起こります
こんな事が開業後、改装後数年で起きてしまう可能性があるんです
もちろん
『ホモジニアスタイル』
でも磨耗はするし、経年劣化はしますが部分的な張り替えもホモジニアスタイルなら比較的簡単にできるし、僕らのメンテナンスでも維持がしやすい
デザイナーさんや工務店さんは『使い手』である先生方が数年後にこんな悩みを持つことを知らないですよ
歯医者さんをよく知ってるってデザイナーさんが作ったクリニックでもこんなことはしょっちゅうあるし、床材の特性なんて知らないから未だにフローリングを施工したりコンポジションタイルを勧めたりするんです
僕に相談してくれる先生には絶対勧めないし、デサイン性も高く、メンテナンスもしやすく、高価じゃない床材を提案するようにしてます、
先生方のクリニックのデザインは
デザイナーさんの作品
ではない
デザイン性も機能性もメンテナンス性も考えてデサインを考えてくれるデザイナーが本当に優秀なデザイナーやと思う
こんな知識やノウハウは歯科だけを専門に長くメンテナンスをしてる僕らの方がよくわかってるし、改装を僕に依頼してくる先生が多いのもそれが理由だと思う
僕らは
『作り手』
に寄り添うわけじゃなく
『使い手』
である先生に寄り添う仕事なのでそういう知識や経験をまとめて1冊の本にするのが僕の夢
最近ボチボチ資料集めも始めたし、先生から聞き取りもし始めてる
僕の仕事の集大成として何とかやり遂げたいな
ユニットのヒビ
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